
多くの中小企業で、「5Sをやろう」「改善活動を強化しよう」という掛け声は、これまでも何度となく上がってきたはずです。
最初は現場も動き、掲示物を作り、ミーティングも開く。しかし数カ月も経つと次第に形骸化し、気づけば元通り。ムダな作業は減らず、残業は常態化し、利益は思うように伸びない――そんな状況に心当たりはないでしょうか。
なぜ5Sや改善活動は続かないのか
多くの場合、「忙しいから」「現場が協力的でないから」と原因を捉えがちです。しかし、問題の本質は別のところにあります。
それは、なぜ改善するのかが組織で共有されていないことです。
5Sや改善活動が「やるべきこと」として上から降ってくるだけでは、現場にとっては追加業務にしか見えません。
「なぜ今これをやるのか」「やることで何が良くなるのか」が腹落ちしていないままでは、続かないのは当然とも言えます。
改善が「イベント化」してしまう構造
改善活動が長続きしない会社では、共通して次のような構造が見られます。
- 期間限定の取り組みとして始まる
- 成果より“やった感”が重視される
- 評価や判断基準と結びついていない
この状態では、改善は日常業務とは切り離された「特別なイベント」になってしまいます。結果として、忙しくなるほど後回しにされ、形だけが残って中身が消えていくのです。
ムダが減らないまま残業が増える理由
改善活動が定着しないと、現場では非効率な作業が当たり前になります。
探し物、手戻り、二度手間、属人化した作業…。これらは一つひとつは小さく見えても、積み重なることで大きな残業時間を生み出します。
経営者としては「もっと生産性を上げてほしい」と感じていても、現場からすれば「何を基準に改善すればいいのか分からない」。
このギャップが、利益が伸びない原因となって表面化します。
続く改善と続かない改善の決定的な違い
改善活動が根付いている会社では、5Sやムダ取りが「当たり前の判断基準」として機能しています。
それを支えているのが、「この会社では、どんな状態が良い仕事なのか」という共通認識です。
- なぜムダをなくすのか
- 効率化は何のために行うのか
- 品質と効率がぶつかったとき、どう考えるのか これらが共有されていれば、改善は指示されなくても自発的に生まれます。
改善を仕組みに変える「MVV」という視点
5Sや改善活動を一過性で終わらせないために重要なのが、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)との接続です。
- ミッション:この会社は何のために存在するのか
- ビジョン:どんな状態を目指しているのか
- バリュー:日々の判断で何を優先するのか
改善活動を「コスト削減」や「残業削減」だけで語るのではなく、会社の存在意義や目指す姿と結びつけることで、現場の意味づけが変わります。 改善は“やらされる活動”ではなく、“この会社らしさを体現する行動”へと変わっていくのです。
まとめ
5Sや改善活動が続かないのは、現場の意識が低いからではありません。
改善の目的と判断基準が共有されていないことが原因です。
MVVによって「なぜ改善するのか」「どんな状態を良しとするのか」を明確にすれば、改善は掛け声ではなく仕組みになります。
ムダが減り、残業が減り、利益が積み上がる。その流れを生み出すために必要なのは、新しい施策ではなく、組織の軸を整えることなのです。