
ここ数年、売上は大きく落ちていない。むしろ数字だけを見れば安定しているようにも見える。 しかしその一方で、原材料費や外注費、人件費は確実に上がり続けている。月次では何とか黒字を保っていても、「このまま来期を迎えて大丈夫なのか」という不安が頭から離れない。そんな焦りを感じている経営者は少なくありません。
数字に表れにくい「利益の不安定さ」
売上が横ばいの場合、経営の危機は表面化しにくくなります。
大きな赤字が出ているわけではないため、現場も危機感を持ちづらい。しかし実際には、
- 原価率がじわじわ上がっている
- 利益のブレ幅が大きくなっている
- 来期の見通しが立てにくい
といった“静かな異変”が起きています。これは放置すると、ある時点で一気に経営を圧迫する要因になります。
原価上昇に「場当たり対応」してしまう理由
原価が上がると、値上げやコスト削減を検討するのは自然な流れです。しかし多くの会社では、その判断が場当たり的になりがちです。
- この取引先は値上げしづらい
- この工程は削れそうにない
- 今期は何とか我慢しよう
こうした判断が積み重なると、どこで利益を確保し、どこで譲るのかが曖昧になり、結果として利益構造が見えなくなります。
「判断基準が曖昧」なまま進む危うさ
本来、値上げ・値下げ、内製・外注、投資・抑制といった判断には、会社としての一貫した基準が必要です。
しかしその基準が言語化されていないと、判断は経営者の感覚に依存し、再現性のないものになります。
- 去年は通った判断が今年は通らない
- 担当者ごとに基準が違う
- 説明しきれず、社内に不満が残る
この状態では、来期の利益を見通すことがますます難しくなります。
利益を安定させる会社が持っている視点
利益が安定している会社は、単にコスト管理が上手いわけではありません。
「どこで利益を出す会社なのか」「何にコストをかける会社なのか」が明確です。
- 価値を生まない原価は削る
- 価値につながる原価は守る
- その線引きを全員が理解している
この共通認識があるからこそ、環境が変わっても判断がブレにくく、利益の見通しを立てやすくなります。
利益構造を支える「MVV」という土台
この判断軸をつくるために重要なのが、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)です。
- ミッション:この会社は何の価値を提供しているのか
- ビジョン:どんな事業構造を目指しているのか
- バリュー:利益判断で何を優先するのか
MVVが明確であれば、「この原価は守るべきか」「この仕事は利益率が低くても続ける意味があるのか」といった問いに、感覚ではなく言葉で答えられるようになります。
結果として、来期の利益を“予測できる状態”に近づけていくことができます。
まとめ
売上が横ばいで原価が上昇する局面では、経営者の判断力が試されます。しかし、判断基準が曖昧なままでは、焦りだけが募り、打ち手が見えなくなってしまいます。
MVVを通じて「どこで利益を出す会社なのか」を明確にすることで、原価上昇局面でもブレない判断が可能になります。
来期の利益を読むために必要なのは、特別なテクニックではなく、経営判断を支える“軸”を整えることなのです。