
多くの中小企業の経営者が、ある段階で同じ不安に直面します。
「中堅が育たない」「任せられる幹部がいない」「自分がいないと判断が止まる」。
日々の業務は回っているように見えても、経営者が不在になると途端に意思決定が滞り、現場が様子見状態になる。そんな“見えない危機”を抱えたまま事業を続けている企業は少なくありません。
なぜ「中堅が育たない組織」になってしまうのか
この問題は、単に「本人の能力不足」や「最近の若手は主体性がない」といった話ではありません。
根本的な原因は、判断の基準と期待役割が言語化・共有されていないことにあります。
中堅社員は、現場を理解し、ある程度の経験も積んでいます。しかし、
- どこまで自分で決めていいのか
- 何を優先して判断すべきなのか
- 経営者は何を大事にしているのか
これらが曖昧なままだと、「失敗するくらいなら聞いたほうが安全」という行動が染みついてしまいます。結果として、中堅は“できる人”で止まり、“任せられる人”には育たないのです。
「自分が決めたほうが早い」が組織を止める
経営者としては、「説明するより自分が決めたほうが早い」「任せてミスされるくらいなら自分で判断したい」と感じる場面も多いでしょう。
しかしこの選択の積み重ねが、
- 判断が経営者に集中する
- 中堅は判断経験を積めない
- 幹部候補が育たない
という悪循環を生みます。
その結果、経営者が不在=会社の意思決定が止まる、という脆弱な状態が固定化されてしまいます。
幹部不在のまま進む組織が抱えるリスク
この状態を放置すると、次のような問題が顕在化します。
- 経営者が休めない、現場を離れられない
- 新規事業や組織改革に着手できない
- 採用しても「指示待ち人材」ばかりが残る
- 将来の事業承継・引継ぎが現実的でなくなる
短期的には業績が安定しているように見えても、中長期では「人が育たないこと」そのものが最大の経営リスクになります。
任せられる幹部を育てるために必要な視点
幹部が育つ組織には共通点があります。それは、判断の軸が個人ではなく組織にあることです。
「この会社では、何を優先して判断するのか」
「迷ったとき、どの価値観に立ち返ればいいのか」
これが明確であれば、中堅は安心して判断経験を積めます。失敗しても「ズレた理由」が言語化でき、成長につながります。逆に、軸が見えないままでは、いつまで経っても“経営者の代わり”は生まれません。
解決の鍵は「MVV」による役割と判断基準の明確化
この構造を変えるために有効なのが、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の策定と活用です。
- ミッション(存在意義):この会社は何のために存在しているのか
- ビジョン(未来像):どんな未来を目指しているのか
- バリュー(価値観・行動指針):判断や行動で何を大切にするのか
これらを明文化し、幹部・中堅に「任せたい判断」と紐づけることで、経営者は少しずつ判断権限を委ねられるようになります。
重要なのは「全部任せる」ことではなく、「この軸に沿った判断なら任せる」という共通認識をつくることです。
まとめ
「中堅が育たない」「任せられる幹部がいない」という悩みは、人材の問題ではなく組織設計の問題です。判断基準が経営者の頭の中に留まっている限り、会社はいつまでも“経営者依存”から抜け出せません。
MVVを通じて判断の軸を共有することで、経営者がいなくても動く組織、そして任せられる幹部が育つ土壌が整います。
会社を止めないために必要なのは、誰か一人の頑張りではなく、「判断が引き継がれる仕組み」をつくることなのです。